先日ご紹介させていただいた”不幸な国の幸福論”が読み応えあったので同じ著者の前作”悪魔のささやき”を読みました。何だかドキッとする題名ですが・・・
精神科医として何百人もの犯罪者と向き合い、同時にご自身の内面を見つめながら考えてこられた結論として、”やはり悪魔はいるだろう。”と書かれています。どこに?どんな形でいるんだ??と思いますが、著者は”あなたのなかにも悪魔が棲んでいるんですよ”とおっしゃっていて、それは脅しでもなく、誇張されているわけでもないことが文面から伝わってきました。死刑囚の言動や最期を向かえる様子などが例としていくつか紹介されているのですが、浮かび上がるのは自分自身と変わりない1人の人間として描かれていること。彼らが異質な人ではなく、ほんの紙一重で皆誰しも”魔がさす”可能性を持っていることが感じられます。
著者は今のような混沌とした時代ではなおさら無自覚に暮らしていると内なる悪魔に突き動かされ、悪をなしてしまう危険性が高い、と書かれています。じゃ、どうしたら悪魔のささやきから逃れられるのか??
まず、①自分の周りだけに関心をとどめてしまわず、視野を360°広げ、出来るだけ遠くまで見ること。確かに自分のことにしか興味ないのか!?とツッコミたくなることありますね。。②宗教の本質について理解を深める。これも、日本では世界の代表的な宗教についても学校でほとんど学ばないので無防備な青年たちが怪しい新興宗教のいかがわしさに抵抗力がないと頷けます。③死のむごさ、醜さと向かい合う。④「個」を育てる。自分で物事を考えて反省し、個人として生きること。著者が言う個人主義とは、人間ひとりひとりが思想、信教の自由を持ち、また個人が尊重されること。
長々と書いてしまいましたが、麻原彰晃の獄中での様子や、人が極限状態になり、動物のようになってしまう精神状態についても書かれていて、こちらも非常に読み応えある本でした。